中宮温泉は全国でも珍しい加水加温なしの天然温泉である。もちろん循環濾過もしていないし、殺菌のための塩素も投入していない。開業は明治二年だそうだ。昔はもっと温泉宿があったのだろうが、今では二軒しかない。豊富な熱い湯がどんどんと川に流れ出ていく。そんな様子を見ているともったいないなぁという気持ちになる。

金沢市内からだと車で小一時間ほどだが、十分に秘境と言える山あいにある。手取川に沿って走る国道157号線を進む。途中には白山比咩神社や一里野温泉スキー場がある。手取川は金沢市内を流れる犀川や浅野川と違い、暴れ川の異名もあり野趣あふれる自然の景観が圧巻だ。中でも手取川渓谷は必見である。

鶴来の町を過ぎ、15分ほど進むと右手に「ねごろ」という餅屋が現れる。ここで草餅を何個か買うとよい。秘境に入っていくのでいざという時の非常食にもなる。ねごろを過ぎるとすぐ左手に「手取川」という食堂がある。ここが白山に向かう最後の食堂なので、いつも私はここで天婦羅蕎麦を食べ腹ごしらえする。蕎麦殻の入った田舎そばにアツアツの海老天が二匹も入って860円。なかなかどうして美味しい。

さあ、ここから先はいよいよ山道になっていき、いわゆる限界集落というのが散見されるようになる。人の気配を感じない集落を見ていると、日本の原風景がどんどん変わっていくようで考えさせられる。この日は数十匹の野生の猿の集団にも遭遇した。

中宮温泉の湯はほんのりと白濁している。私は中宮温泉に通いだして早10年近くになるが、気のせいか湯治客は年々減っていくように思う。最近は小一時間ほどの入浴時間に他の客と遭遇することがめっきり少なくなり、ほぼいつも貸し切り状態。嬉しいような寂しいような複雑な気持ちなのである。

日本秘湯を守る会の宿 にしやま旅館
*11月下旬から4月下旬まで閉湯
〒920-2324 石川県白山市中宮温泉
金沢の中心地から50キロ余り
TEL 076-256-7219(代) FAX 076-256-7643
フリーダイヤル フリーダイヤル 0120-86-721
入浴時間(日帰り) 午前10時~午後3時
定休日 無休
入浴料金 大人550円