寺町にある寶勝寺は、金沢では珍しい臨済宗のお寺である。

住職の友峰和尚は元々は福井の名刹、大安禅寺の住職で、本山からの命を受け、廃寺同然だった寶勝寺を生き返らせた。

友峰和尚の言葉として有名なのは、一に掃除、二に笑顔、三四元気におかげさまーー。よくよく噛みしめると味わい深いというか含蓄のある言葉だと思う。その言葉通り、寶勝寺は感心するほど掃除が行き届いている。

これもまた和尚の発案のようだが、本堂の一角にはカフェが設置されていて営業時間内であれば誰でも利用できる。元々禅寺なので本堂の空気は静謐で凛としていて心が洗われるような清々しい気持ちになれるから不思議だ。

何年か前に友峰和尚の法話を拝聴したことがあるが、以来すっかりファンになってしまった。和尚は著名な書道家でもあるので弟子入りを志願したのだが、やんわりと断られてしまった。書道を人に教えるのは好まないそうだ。その理由はガールフレンドからラブレターをもらった時、上手な字で書かれているよりも一生懸命に書かれた手紙の方が嬉しかったからだそうだ。要するに愚弟はいらぬということなのだろう。

和尚は寶勝寺と大安禅寺の他にも、無住職になった三カ寺の住職も兼務しているそうだ。少子高齢化と人工知能の時代にあって、寺院に限らず伝統文化のあり方や向き合い方が問われている。旧態依然は座して死を待つようなもの。生き延びるためには誰もが変化しなければならない。そんなことを想いながら今日は和尚が考案したという焼きおにぎり茶漬けを有難く頂いたのであった。